rectal carcinoid
直腸カルチノイド(直腸NET)とは

直腸カルチノイド(直腸NET)とは

医療法人香誠会 えぞえ消化器内視鏡クリニック

直腸カルチノイド(直腸NET)について

カルチノイドという病名は “がんもどき”という意味を持っています。他の悪性腫瘍と比べて比較的おとなしい腫瘍という特徴を加味して1907年に命名されましたが、実際には遠隔転移を来すような症例もあり、誤った認識を与えるため、2000年に世界保健機関(World Health Organization:WHO)によりカルチノイドから神経内分泌腫瘍 (neuroendocrine tumor: NET)という名称に変更されました。
したがって、直腸カルチノイドは直腸NETと呼ぶべきであろうと思われますので、この記事では直腸カルチノイド(直腸NET)と併記することにします。

この記事では、直腸カルチノイド(直腸NET)について、その特徴、症状、検査、および治療について詳しく説明します。

直腸カルチノイド(直腸NET)の特徴

NETとは神経内分泌細胞から発生する腫瘍です。
神経内分泌細胞はホルモンやペプチドなどを分泌する細胞の総称で、全身に分布しているため、NETも全身の臓器に発生することになります。このうち、消化器領域に発生するものが約60%、肺や気管支など呼吸器領域に発生するものが約30%とされています。消化器領域では、膵臓、直腸に発生するものが最も多いため、内視鏡検査でよく遭遇するのは直腸の病変(直腸カルチノイド、直腸NET)ということになります。

NETは、腫瘍細胞の悪性度によって、増殖能が低く「 低~中悪性度」の(NET G1、NET G2、NET G3)と、増殖能が高く「高悪性度」の(NEC:neuroendocrine carcinoma)に分類されます。この悪性度の違いによって治療方法が大きく異なります。

直腸カルチノイド(直腸NET)の症状

直腸カルチノイド(直腸NET)の多くは無症状であり、症状を出現させる(ホルモンを分泌している)機能性NETといわれるものは3〜4%に過ぎないとされています。機能性NETがホルモンを分泌することで何らかの症状が出現しているものを「カルチノイド症候群」と言います。こちらに関しては現在もカルチノイド症候群という呼び名のままで、NET症候群とは言いません。カルチノイド症候群をきたした際には、紅潮、腹痛、下痢、右心不全、喘鳴、皮疹などを認めることがあります。

多くが無症状であることから、健康診断や人間ドックで行われる便潜血検査で「陽性」になった人が大腸カメラを受けることで見つかる場合が多いです。基本的には検査を受けない限りは見つからない病気です。

直腸カルチノイド(直腸NET)の検査

直腸カルチノイド(直腸NET)の診断には、次のような検査が行われます。

 

大腸内視鏡検査

内視鏡(大腸カメラ)を使用して直接観察し、腫瘍の部位、大きさ、形などを確認した上で、組織検査のための生検を行います。内視鏡で見ると、表面が正常な粘膜に覆われている黄色調の粘膜下腫瘍として発見することが可能です(図1)。
直腸NETは粘膜の下に位置するため、粘膜表面からの生検では腫瘍組織が採取できない場合もあり、診断の確定になかなか至らない場合もあります。

 

超音波内視鏡検査(EUS)

粘膜の下に存在する腫瘍の特徴を観察することで、より正確な診断が可能になります。
表面からの生検で組織が得られない時、腫瘍が大きい時、などは超音波内視鏡で腫瘍を確認しながら針を刺して細胞を採取する超音波内視鏡ガイド下穿刺吸引細胞診(EUS-FNA)という方法で組織検査を試みます。

 

病理組織診断

NETかどうかの診断に加えて、正確に悪性度分類を行うことで、治療方針を決定することになります。正確な診断・適切な治療方法の決定のためには、病理組織診断が必須です。

  • 【図1】直腸カルチノイド(直腸NET)

直腸カルチノイド(直腸NET)の治療

直腸カルチノイド(直腸NET)の治療には、手術、薬物療法、局所療法などがあります。
基本的に、安全に切除できると判断される場合は腫瘍を残らず切除することになります。

 

内視鏡的切除術

腫瘍サイズが1cm以下、深達度(深さ)が粘膜下層レベルにとどまる、形がいびつでないもの、という条件が揃うような腫瘍は転移率が低いとされています。超音波内視鏡検査やCTでリンパ節転移や遠隔転移がないと確認できた場合は、内視鏡治療を行います。

 

外科的手術

腫瘍サイズが1cm以上、深達度(深さ)が粘膜下層より深いものに関しては、リンパ節への転移のリスクが高くなるため外科手術を行うことになります。あくまでNET治療の原則は外科的切除となっています。

 

薬物治療

手術が不可能な場合には、薬物療法を行います。
薬物療法は腫瘍の進行を抑える目的の治療と、症状を改善する治療に分けられます。

 

 

以上が、直腸カルチノイド(直腸NET)についての基本的な情報です。
定期的な健診やドックを受けること、便潜血検査で「陽性」となったらちゃんと大腸内視鏡検査を受けること、などが早期の段階で発見して早期に治療を受けるために重要なことです。