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京都市中京区えぞえ消化器内視鏡クリニック院長のブログ

医療法人香誠会 えぞえ消化器内視鏡クリニック
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胃もたれと風邪が同時に起こるとき|胃腸風邪を徹底解説

胃もたれと風邪症状が同時に起こると、体全体の不調を感じやすくなります。初期段階では軽い食欲不振や微熱程度にとどまることもありますが、進行すると吐き気や腹痛を併発するため、一気に生活の質が下がってしまいます。

こうした状態は一般的に「胃腸風邪」と呼ばれますが、原因の多くはウイルスや細菌による感染性の胃腸炎です。また、体調不良による胃酸の逆流や自律神経の乱れが加わることで、さらに症状を複雑化させることがあります。

本記事では、胃もたれと風邪症状が同時に起こる原因や、実際の症状、治療・対処法、長引くときの注意点などを詳しく解説します。病院を受診するタイミングや、薬の選び方にも触れ、胃腸風邪を正しく理解しケアするためのポイントをまとめました。

 

胃腸風邪(お腹の風邪)とは

いわゆる「お腹の風邪」といわれる胃腸風邪ですが、呼吸器の風邪とは少し異なる性質があります。

一般的に風邪と呼ばれる症状は、鼻水や喉の痛みなど耳鼻科領域・呼吸器領域の症状を中心としています。しかし胃腸風邪の場合、発熱や倦怠感こそ共通していても、主役はあくまで胃腸の炎症にあります。そのため、便がゆるくなったり、嘔吐を繰り返したりといった消化器症状が顕著に現れることが特徴です。

医学的には、胃腸風邪は正式名称を感染性胃腸炎といい、ウイルスや細菌による胃腸の炎症を指します。呼吸器系の風邪よりも下痢や腹痛などの消化器症状が強く、むしろ呼吸器系の症状が軽いか、ほとんどないことも珍しくありません。こうした性質の違いが、胃腸風邪は「胃にくる風邪」と呼ばれる理由の一つです。

また人によっては、鼻や喉の不調がなくても強い吐き気や下痢が続く場合があります。これは呼吸器系のウイルス・細菌が胃腸にも影響を及ぼすケースとは違い、主に消化器系のウイルス・細菌が原因で症状を引き起こすためです。結果として、同じ風邪と呼ばれていても実際は異なるメカニズムが働いているというわけです。

 

胃もたれと風邪症状が起こる原因

胃もたれと風邪のような症状が同時に起こる背景には、ウイルスや細菌などの感染だけでなく、体調不良を起こした後の胃酸逆流や自律神経の乱れが関わっています。

通常の風邪と異なり、胃腸風邪では胃の不快感や痛みを強く感じることがあります。これはウイルスや細菌が胃腸を直接刺激して炎症を引き起こすためで、食べ物の消化がうまくいかないことが原因とされています。また、感染がきっかけとなって起こる脱水や電解質バランスの乱れも、全身の倦怠感を悪化させる一因となります。

さらに体調を崩すと、咳やくしゃみなどで腹圧が上がるほか、横になる時間が増えるため、胃酸が食道に逆流しやすくなることがあります。これにより胸焼けや胃もたれが一層ひどくなり、なかなか回復できない状態に陥る人も少なくありません。特に強い咳が続く場合は、胃だけでなく食道にも負担がかかるため注意が必要です。

また精神的なストレスや発熱による自律神経の乱れも、胃の働きを弱める原因になります。長引くストレスなどが加わると、胃酸の分泌リズムが崩れたり、腸内環境が乱れたりして、慢性的な胃もたれを感じやすくなります。こうした複数の要因が重なることで、風邪症状と胃もたれが同時に発症し、やっかいな状態を引き起こすのです。

 

ウイルス性胃腸炎・細菌性胃腸炎のしくみ

ウイルス性胃腸炎は、ノロウイルスやロタウイルスなどの病原体が経口感染により体内に侵入し、胃腸に炎症を起こすことで発症します。これらのウイルスは腸管の粘膜を荒らし、激しい下痢や嘔吐を引き起こすのが大きな特徴です。特に冬場に流行しやすく、集団感染を招くことが多いため、手洗いやうがいの徹底などの感染対策が重要となります。

一方で細菌性胃腸炎は、ブドウ球菌やサルモネラ菌などの細菌が食品を介して体内に侵入し発症します。細菌が産生する毒素が腸を刺激し、激しい腹痛や下痢・嘔吐に発展することが少なくありません。夏場は食べ物が傷みやすく、細菌性胃腸炎が増える傾向にあるため、調理や保存の方法には充分に注意する必要があります。

これらウイルスや細菌による感染症では、消化器系が大きくダメージを受けるだけでなく、免疫反応の結果として倦怠感や発熱も見られます。つまり風邪のような症状がありつつ、胃もたれや下痢といった消化器症状が強く出るのが特徴であり、これが「胃腸風邪」と呼ばれる所以でもあります。

 

体調不良後に悪化する逆流性食道炎と腹圧の上昇

風邪で長引く咳やくしゃみは、想像以上に腹圧を高めます。その結果、胃の内容物が食道へ逆流しやすくなり、胸焼けや喉が焼けるような感じを伴う逆流性食道炎を引き起こすことがあります。特に夜間に咳が多くなると、横になった姿勢のまま胃酸が逆流しやすくなり、寝ている間に症状が悪化するケースも見られます。

また解熱鎮痛薬や咳止め薬を服用している場合、胃への負担が増すこともあるため注意が必要です。こうした薬には胃酸分泌を促進する成分が含まれる場合があり、胃粘膜が弱っている状態では逆流のリスクをさらに高めることがあります。医師に相談しながら、より胃への影響が少ない薬を選ぶことを検討するのも一つの方法です。

腹圧の上昇と同時に、体力低下により胃腸の働きが鈍くなると、食べた物が胃に長く停滞します。すると胃もたれだけでなく、食道への逆流の頻度も上がるため、症状がなかなか改善しない状況に陥ります。高い枕を使用するなど、薬を使わなくてもできる工夫も有効ですので、できる限り対策を講じることが大切です。

 

慢性胃腸炎・機能性ディスペプシア・PI-IBSにも注意

急性時の激しい胃腸症状が治まっても、食事をするたびに胃もたれや腹部膨満感が続く場合があります。そのようなときは、機能性ディスペプシアや慢性胃腸炎を疑うことが大切です。これらは内視鏡検査などでも明確な異常が見つからない場合が多く、ストレスや腸内細菌の乱れなどの複数の要因が関与しているとされています。

また胃腸風邪になった後は、感染後過敏性腸症候群(PI-IBS)と呼ばれる状態に移行するケースもあります。胃腸感染症がきっかけで腸の運動機能や腸内環境が乱れてしまうことが原因と言われています。下痢と便秘を繰り返したり、慢性的な腹痛が続いたりといった症状が長期間続くこともあるため、注意が必要です。

これら慢性化した胃腸トラブルは、生活習慣や食事内容を見直すだけでなく、場合によっては医療機関での検査や薬物療法が必要となる場合もあります。症状を軽視して放置すると、さらに長期化するリスクがあるため、少しでも違和感があれば専門家に相談するのが望ましいでしょう。

 

胃腸風邪の主な症状と経過

胃腸風邪は急性期の症状が強いことが多いですが、長引くと慢性的な胃腸炎として症状が続くこともあります。

胃腸風邪の典型的な症状には、下痢や嘔吐、腹痛など強い消化器系のトラブルが挙げられます。同時に発熱や倦怠感など、通常の風邪に似た全身症状を伴う場合もありますが、最も強く出る症状が胃腸の不調というのが特徴です。これらの症状は感染した病原体の種類や個人の体力、免疫力によって軽重が異なります。

急性期には短期間で症状が激しく現れる一方、回復までには数日から1週間ほどかかるケースが一般的です。しかし体力低下が著しい場合や適切な治療を受けられなかった場合には、症状が長引いて慢性胃腸炎へ移行することもあり得ます。その場合は軽快するまでに数週間以上を要することがあります。

また体質的に胃腸が弱い人やストレスを抱えやすい人は、同じ病原体に感染しても症状がより重く出ることがあります。家族や周囲で同様の症状を訴える人がいれば、集団感染の可能性も高まるため、早期の対応と予防策の徹底が求められます。

 

急性・慢性胃腸炎の典型的な症状と治るまでの期間

急性胃腸炎では、吐き気、嘔吐、下痢などの症状が突発的に現れ、発熱や激しい腹痛を伴うことがよくあります。通常は1週間程度で回復しますが、重症化すると脱水症状を起こすこともあるため、水分補給を忘れずに行いましょう。

一方、慢性胃腸炎になると症状は急性期ほど激しくないものの、数週間から数カ月にわたって腹部の不快感や食欲不振が続く場合があります。ときには発熱や下痢が再発し、治ったと思ってもぶり返すことがあるため厄介です。

慢性化を防ぐためには、早期の休養と適切な食事管理が重要です。症状が軽減したとしても油断せず、胃腸への負担を最小限に抑えるように過ごすことが、スムーズな回復の鍵となります。

 

吐き気・嘔吐・下痢などの対処法

激しい吐き気や嘔吐が続く場合、無理して食事をするのは避け、まずは水分補給を優先することが大切です。経口補水液やスポーツドリンクを少量ずつこまめに摂取し、嘔吐が落ち着いたら消化の良い食事をゆっくりと再開していきましょう。

下痢が続く場合も同様に、水分と電解質の補給を怠らないようにしてください。脂っこい食事や刺激物は胃腸への負担を増やすため、避けるのが賢明です。また、極端に冷たい飲み物や熱すぎる飲み物も胃粘膜を刺激する可能性があるため、適度な温度で摂取することが望ましいでしょう。

もし嘔吐や下痢が長期化し、熱が下がらないなど症状が重い場合は、早めに医療機関を受診することが重要です。自宅での自己判断ではなく、専門家による正確な診断と適切な治療を受けることで、状態の悪化を防ぐことができます。

 

風邪薬・胃腸薬の上手な併用と注意点

一般的な風邪薬には、解熱鎮痛成分や咳止め成分が含まれていますが、胃腸への負担が大きくなる場合があります。胃腸が弱っているときは、有効成分が胃を荒らす可能性があるため、自己判断での服用は避けたほうが無難です。

一方で胃腸薬には制酸剤や消化酵素など、胃腸の働きをサポートする成分が配合されています。呼吸器症状と消化器症状の両方が出ている場合は、医師や薬剤師に相談しながら風邪薬と胃腸薬を併用することも選択肢の一つとなります。

ただし併用の際には、お互いの薬の成分が重複してしまう可能性に注意が必要です。特に解熱剤の過剰服用は胃酸分泌を増やし逆流を悪化させるリスクがあるため、必ず専門家の指導のもとで適切な飲み合わせを守るようにしましょう。

 

感染性胃腸炎が治った後も続く胃もたれとは?

一度は下痢や嘔吐などの急性期症状が治まっても、胃の不快感が長期化するケースがあります。

急性期の激しい症状が収まると、多くの方は「これで治った」と安心します。しかし、胃粘膜や腸内環境が完全に回復していない場合、食事を取るたびに胃もたれや腹部の張りを感じることがあるため油断は禁物です。これらの違和感が続くと無意識に食事量を減らしてしまい、結果的に栄養不足に陥るリスクも高まります。

また、ウイルスや細菌により一度ダメージを受けた胃腸は、普段よりも抵抗力が弱まっています。その状態でストレスや睡眠不足が重なると、胃酸の分泌バランスが乱れて慢性胃炎や機能性ディスペプシアの状態に移行しやすくなるのです。そうなると、気温の変化やちょっとした食生活の乱れでも症状が悪化することがあります。

人によっては過去の胃腸風邪がきっかけで、慢性的な胃もたれや腸の不調に悩まされ続けるケースもあります。こうした長期の不調を防ぐためには、急性期後のケアが非常に重要となりますので、消化に優しい食事を続けたり、十分な休息を取ったりして胃腸をいたわることを心がけましょう。

 

早めの受診が必要なケースと病院の選び方

症状が重くなったり、治る気配がなかったりする場合は早めに医療機関を受診することが大切です。

まず、下痢や嘔吐が短期間に何度も起こり、水分さえ受け付けない状態が続く場合は、脱水症状のリスクが極めて高まります。そのような際は迷わず病院へ行くべきです。特に小さな子どもや高齢者の場合、体力が消耗しやすいため、数時間単位でも悪化していく可能性があります。

また、胃もたれや胸焼けが数週間以上続き、一般的な市販薬で改善しない場合は早めに専門医の診察を受けるのが望ましいでしょう。内科や消化器内科では、血液検査や内視鏡検査を通じて原因を特定し、適切な治療方針を立ててもらえる可能性があります。

病院を選ぶ際には、急性症状が強い場合は救急対応が可能な内科、慢性的な胃の不調ならば消化器内科など、症状の性質に合わせた診療科を選択すると良いでしょう。いずれにしても、素人判断で症状を放置すると取り返しのつかない状態に陥ることもあるため、少しでも不安があれば受診してみることをおすすめします。

 

まとめ(総括)

胃腸風邪は正しい知識と対処により多くの場合改善しますが、慢性化しないよう早めのケアや医療機関の受診が重要です。

胃もたれや風邪症状が同時に起こるときは、ウイルスや細菌による胃腸炎や体調不良後の胃酸逆流が関与していることが多いです。急性期には下痢や嘔吐が集中して起こる一方、治った後も胃の不快感が長引く例も珍しくありません。そうした状態を見極めるためには、自分の症状を客観的に把握し、早めに対策を取ることが大切です。

また、気になる症状が少しでも長引く場合は、医療機関で検査を受けるのが望ましいでしょう。特に高齢者や子どもは重症化しやすく、急性期の処置が遅れると脱水などの合併症を起こすリスクが高まります。市販薬に頼るだけでなく、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることが安全策といえます。

胃腸風邪の予防には手洗いの徹底や十分な休息、バランスの良い食生活が欠かせません。体調を崩してしまった際でも、適切な水分補給や食生活の見直し、薬の正しい併用によって多くの場合改善が期待できます。ぜひ本記事の情報を参考に、胃腸のケアに努めていただければ幸いです。