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便潜血検査で陽性と言われたら|便潜血検査について詳しく解説

 

国民の健康維持を推進するため、国は各企業に従業員の健康診断を義務付けています。
健康診断では、身長や体重、視力などの一般的な項目のほか、便潜血検査を実施することもあるでしょう。
ここでは、便潜血検査とは何か、検査方法、陽性になった場合に考えられる病気などについて解説しています。
便潜血検査について理解することで、確実な手技で採便して正確な検査結果が得られるため、最後までご参照ください。

 

 

便潜血検査とは

便潜血検査とは、便の中に血液が混ざっていないかを確認する検査を指します。

最近は、ヒトの赤血球中のヘモグロビンという色素にターゲットを絞って検出する「免疫学的潜血反応」という方法が主に用いられています。この方法を使って検査すると、上部消化管(食道や胃や十二指腸など)からの出血の際には、消化液の影響でヘモグロビンが変性して検出しにくくなるため、大腸からの出血のみを検出できることになります。

したがって、便潜血検査で「陽性」となっている場合は、大腸に何かしらの異常が発生して出血している可能性を示しています。

このような理由で、便潜血検査は主に大腸がんのスクリーニング検査(大腸がんなのかそうではないのかを振り分ける検査)として健康診断でよく使用されています。

 

 

便潜血検査の種類

便潜血検査には、1日法と2日法の2種類があります。違いは、1日分の便を取るか、2日分の便を取るかです。
一般的には、2日法を採用している機関が多いでしょう。
1日法と2日法を比較すると、2日法の方が大腸がんの発見率が高いことが分かっているからです。

1回分の便では検出できなかった出血反応が、2回目で確認できたるケースも珍しくありません。
2回分の便を提出したうち、1回でも陽性反応があった場合は精密検査の対象となります。

 

 

便潜血検査のメリット・デメリット

便潜血検査は、大腸がんの疑いがあるかをふるい分けるために健康診断などで行われます。
健康診断を受ける方全員に大腸、内視鏡検査(大腸カメラ)をすることは難しいためです。
自宅で検査ができ、簡易的である一方、たとえ陰性であっても大腸がんを完全に否定できないなど、メリットやデメリットがあります。
以下のメリット・デメリットをご参照ください。

【メリット】

  • 自宅で検査ができ、身体に負担が少ない
  • 検査によるリスクや副作用がない
  • 検査の待ち時間がない
  • 命に関わる重大な病気を早期に発見できる

 

【デメリット】

  • 陽性反応が出た場合は精密検査が必要だが、受けない人も多い
  • 陽性だったとしても大腸がんの確定診断にはならない
  • 生理や痔があっても陽性反応が出てしまう
  • 採便する時期が決められており便秘や下痢の人はタイミングが難しい

便潜血検査は、あくまで大腸がんの疑いがあるかを調べる検査であり、陽性の場合は精密検査が必要です。
一方で、陰性だから大腸がんの可能性がないとは言い切れないため、腹痛や便秘、便が細いなどの気になる腹部症状がある場合は、精密検査をおすすめします。

 

 

便潜血検査の方法

便潜血検査とは、具体的にどのような方法で採取するのか、以下の流れで詳しく解説します。

  • ステップ1:便を採取する容器に名前や採取日を記入する
  • ステップ2:便を検査用のスティックで採取する
  • ステップ3:適切な場所で保管する

 

ステップ1:便を採取する容器に名前や採取日を記入する

健康診断を行っている機関や、医療機関などで便潜血検査のための容器が渡されます。
最初に自分の便であると分かるように名前を記入しましょう。また、採取した便は日を追うごとに変性するため、採取してから2〜3日以内の提出が望ましいとされています。便を採取した日付も記入しておきましょう。

 

ステップ2:便を検査用のスティックで採取する

家庭のトイレは、便器内に水が張ってあるられていることがほとんどでしょう。
便が水に触れてしまうと、正しい検査ができないため、水に触れないように排便しなければなりません。
排便時の工夫として、以下の方法が考えられます。

  • 通常よりも浅めに便器に座り、水に便が落ちないように排便する
  • 多めのトイレットペーパーを手に持ち、肛門から出てくる便を取る

【採便用シート】という、便器内の水面に敷いて排便することで水に浸かることなく便が採取できるシートも検査用キットと一緒に配布される場合もあります。

便器の構造上、採取できるスペースがない場合や、通常と異なる姿勢では出しにくい人は、採便用シートを活用するとよいでしょう。
排便が完了したら、採便用のスティックで便の表面をこするようにして検体を採取します。

 

ステップ3:適切な場所で保管する

便の採取が完了したら、提出日まで涼しいところに保管しておきましょう。
便潜血検査は血液の混入を調査するため、血液の成分であるヘモグロビンが残っているうちに調べなければならないからです。
採取した便を保存する場所の環境や保存期間によって、ヘモグロビンが減少し、本来陽性だったものが陰性になってしまう可能性があります。便を採取したら、推奨された環境に保存しましょう。

 

 

便潜血検査の注意点

便潜血検査は、自宅で排便したものを検査機関に提出しなければなりません。
便を採取する際や、提出するまでの間の保存方法などについて、以下の点に注意しましょう。

  • 便器内の水に触れないようにする
  • 便を採取するときは表面をスティックでなでるようにする
  • 採取する日は提出日の2~3日前が望ましい
  • 採取した便は冷暗所に保管する
  • 生理中の採取は避ける

なぜ、上記のような注意が必要なのか詳しく解説します。

 

便器内の水に触れないようにする

採取した便が便器内の水に触れてしまうと、正確な検査ができないため、触れないように注意しましょう。
便を採取するときに、表面をこするため、便器内の水に落ちてしまった便を採取すると不正確なデータが出てしまいます。
便器内の水に触れないよう工夫して、採取しましょう。

 

便を採取するときは表面をスティックでなでるようにする

便を採取するときは、専用のスティックで表面をなでるように採取してください。便の塊のなかでも、血液が混入している部分と、そうではない部分があると考えられるからです。
全体的にまんべんなくこするように採取すると、正確な結果が出るため、意識して採取しましょう。

 

採取する日は提出日の2~3日前が望ましい

採取した便の中に含まれるヘモグロビンは、保存期間が長くなるほど減少していきます。
20〜25℃の環境で10日程度保存した場合、90%のヘモグロビンが残っていたというデータがあります。
提出後、検査センターで分析するまでの時間も考慮すると、提出日の2〜3日前に採取するのが望ましいです。

 

保管する場所は冷暗所

便の中に含まれるヘモグロビンは、保存する環境によって変性するためデータに大きく影響します。
以下の表を参照ください。

保存環境 ヘモグロビン残存率
冷蔵庫(およそ4℃)  2~3週間経過しても約96~97%
室温保存(20~25℃)  10日保存して約90%
室温保存(30℃) 2日以降急激に減少し、10日目で約50%

上記の表のように、高温の場所で保存した便はヘモグロビンの量が大きく変動するため、正確な検査ができないといえます。
保管場所は冷蔵庫が望ましいですが、食品と便を同じ空間に置くことに衛生上抵抗を感じる人もいるでしょう。
発泡スチロールの容器に保冷剤を入れて、日の当たらないところに設置して保管しておくのも有効な方法です。
特に夏は保管に困りますが、工夫して提出日まで保管しましょう。

 

生理中の採取は避ける

生理中に便の採取を行ってしまうと、経血が付着する可能性があり、陽性反応が出てしまう場合があります。
正確な検査をするためにも、生理期間中を避けて採便しましょう。
経血量にもよりますが、2〜3日目を過ぎていれば採便可能と考えましょう。

 

 

便潜血検査が陽性だったら

便潜血検査が陽性だった場合は、大腸のどこかで出血している可能性があるため、必ず大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を受けましょう。

 

大腸カメラ(大腸内視鏡検査)

大腸カメラは、肛門から大腸の奥までカメラを挿入して内部を調べる検査です。
メリットやデメリットは、以下の表を参照ください。

メリット
  • 大腸全体を詳しく調べられる
  • 異常がはっきり分かる
  • 異常な部位の細胞を採取して詳しく調べられる
デメリット
  • 検査前に1~2リットルの腸管洗浄剤を飲まなければならない
  • 検査の準備に苦痛を伴う場合がある
  • 肛門からカメラを挿入することに抵抗がある(羞恥心など)


便潜血検査は、大腸がんの可能性があるか否かを調べることが第一の目的です。陽性になった場合は、大腸カメラが唯一の精密検査となります。
大腸内視鏡検査(大腸カメラ)で出血の原因となるような部位がないかを確認し、異常な部位があれば必要に応じて生検(組織を取ること)して、より詳細に調べることになります。

 

 

便潜血検査が陽性だった場合考えられる病気4選

便潜血検査が陽性だった場合に考えられる病気は、大腸がんだけではありません。
一般的に以下の4つの病気が発見しやすいと言われています。

  • 大腸がん
  • 大腸ポリープ
  • 潰瘍性大腸炎

それぞれについて、詳しく解説します。

 

大腸がん

大腸にできる悪性腫瘍です。がんができている場所は出血しやすく、大腸の運動や便が通過するときなどに、がんに触れて出血することがあります。
そのため、便潜血検査で便に血液が混ざっていないかを確認することで、間接的に大腸がんの可能性を判断考慮する材料になります。
ただし、いつも出血しているとは限らず、常に便に血液が混じっているとは言い切れません。便潜血検査のタイミングで出血がなければ、陰性になることも十分考えられます。

大腸がんには、便に血液が混ざる他にも以下のような症状が見られます。

  • 便秘や下痢などの便通異常
  • 便が細い
  • 体重減少
  • おなかの張り
  • 腹痛

便潜血検査が陰性であっても、上記のような症状が見られる場合は必ず受診するようにしましょう。

 

大腸ポリープ

大腸ポリープは、大腸の粘膜表面が突起したものを指します。ポリープは腫瘍性ポリープと非腫瘍性ポリープに分けられ、さらに腫瘍性ポリープは良性のものから悪性となったものまで存在します。腫瘍性ポリープは良性であっても放っておくと大きくなってそのうち悪性化する可能性があるため、発見したら切除するのが望ましいポリープということになります。
大腸ポリープも大腸がんと同様に、便の通過などの刺激により出血することがあるため、便潜血検査はポリープを発見するのにも有効な検査といえるでしょう。

 

潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に炎症や潰瘍ができる病気です。炎症や潰瘍ができる原因は解明されておらず、難病に指定されています。

潰瘍性大腸炎では、粘膜の炎症や潰瘍によりちょっとした刺激でも出血しやすいため、下血や腹痛、下痢などの症状が出た際に大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を受けて検査して発見・診断されることが多いのですが、ごく軽度の潰瘍性大腸炎であれば無症状であるため、便潜血検査ではじめて大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を受けて発見・診断されることも少なくありません。

最近増えてきていると報告されている病気であるため、便潜血検査で陽性を示すことが比較的多いといえるでしょう。

 

痔には、主に以下の3つの種類に分類されます。

  • いぼ痔:直腸と肛門の境目より内側にできる【内痔核】と、外側にできる【外痔核】がある
  • 切れ痔:肛門の皮膚が切れたり裂けること
  • 痔ろう:肛門と直腸の間にある穴(肛門陰窩)に便が入り込み細菌感染を起こす状態

内痔核、外痔核、切れ痔は排便時に出血することがあるため、便潜血検査が陽性になりやすい病気といえます。
痔はデリケートな部位であるため、医師に見せることに抵抗を感じる人も多いでしょう。しかし症状が進行すると生活に支障が出るため、痔を指摘されている人は早めに肛門科専門医を受診するのがおすすめです。

 

 

便潜血検査は病気の早期発見に役立つ

便潜血検査では、大腸に出血するような病気がないかを確認しています。
正確に検査するために、採便するときは注意事項を確認して正しく取るようにしましょう。

陽性の場合は、大腸がんがないかどうかをチェックするのが何よりも第一の目的になりますが、その他の病気によるの出血である可能性も考えられます。

いずれにしても、便潜血陽性が確認できた場合は何かしらの異常が起きているサインとなりますので、必ず精密検査(大腸内視鏡検査)を受けましょう。

たまに便潜血検査が「陽性」となっても、「元々痔があるから痔からの出血だろう」「生理中だったから経血が混じったんだろう」「たまたま肛門が切れただけだろう」と自己判断して精密検査を受けない方がいらっしゃいます。折角の大腸がん早期発見の機会を逃している可能性もあり、大変もったいないことです。

また、健診施設の中には、便潜血検査で陽性となった方に精密検査(大腸内視鏡検査)ではなく便潜血検査の「再検査」を勧めるところもあります。とても残念なことですがとんでもない間違いです。大腸がんでも大腸ポリープでも大腸炎でもいつも出血しているわけではないため、1回でも陽性反応が出てくれればラッキーという考え方で成り立っているのが便潜血検査です。折角の病気発見のチャンスを逃さないように、躊躇することなく消化器内科専門医を受診するようにしてください!!

 


参考サイト

https://www.toholab.co.jp/info/archive/15662/
検便における正しい採便方法

http://www.labo.city.hiroshima.med.or.jp/qanda/1396.html
ヒトヘモグロビン専用容器に採便した後の保存方法や検査可能期間について教えてください

https://www.jsgcs.or.jp/files/uploads/d_manualbook2021.pdf
大腸がん検診マニュアル(49ページ)

https://brand.taisho.co.jp/preser/knowledge/basic01/
主な痔の種類とその症状を解説|大正製薬

https://www.mrso.jp/mikata/202/#:~:text=%E4%BE%BF%E6%BD%9C%E8%A1%80%E6%A4%9C%E6%9F%BB%E3%81%AF2,
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便潜血検査2日法とは?精度や検査結果の見方も解説

https://europepmc.org/article/med/10228797
結腸直腸腫瘍の検出のための免疫科学的便潜血検査の結腸鏡検査の評価