gastric anisakiasis
胃アニサキス症とは

胃アニサキス症とは

医療法人香誠会 えぞえ消化器内視鏡クリニック

アニサキスとは

サーモン、サバ、イカ、カツオ、サンマなどの魚介類に寄生する寄生虫です。
魚介類から人間に入ってくるものは、長さが2~3㎝程度、半透明の糸のような形をしていて、クネクネと動いています。よく観察すれば肉眼でも発見が可能です。人間を宿主にすることはできないため、人間の体内に入ってしまうと長くても1週間程度で死んでしまいます。

 

アニサキス症とは

アニサキスの虫体が感染する部位によって発症までの時間・症状などが異なります。またアレルギーやアナフィラキシーショックなどもあり、どのタイプであっても早めに受診していただく必要があります。

(1) 胃アニサキス症

アニサキスが口から体内に入り、胃の壁に食いついて虫体の一部が入り込むことで発症します。アニサキス症の中では最も頻度が高く、当院にもよく来院されます。
新鮮な魚介類を食べて数時間後に激しい胃の痛み(冷汗が出るくらい痛く強弱の波がある)、吐き気や嘔吐、お腹が張る感じ、などの症状が現れます。

 

胃アニサキス症でみられる症状

  • 激しい胃の痛み
  • 激しい吐き気や嘔吐
  • 腹部が強く張る感じ

これらの症状が新鮮な魚介類を摂取して数時間後にみられたら注意!!

 

これらの症状は、胃の壁にアニサキスが食いついたことによる直接の痛みではなく、アニサキスに対するアレルギー反応だということが分かってきています。
胃にアニサキスがいても全く症状も出ない方もおられ、同じ食事をされた方全員に同じ症状が出るわけではありません。
胃アニサキス症はアニサキスの虫体を内視鏡(胃カメラ)で除去することで速やかに症状が消失しますので、緊急で内視鏡検査を行います。お電話で予約される際にアニサキスの疑いがあることをお伝えください。

 

(2) 腸アニサキス症

アニサキスが口から体内に入り、腸の粘膜に食いつくことで発症します。
新鮮な魚介類を食べて十数時間~数日後に、強い腹痛(胃よりも下)、吐き気や嘔吐、発熱などの症状が現れます。
まれに腸閉塞や腸管穿孔をおこしてしまうこともあり、その場合は入院での治療が必要となります。

 

(3) 消化管外アニサキス症

胃アニサキス症、腸アニサキス症と比べると、かなりまれな疾患です。
感染したアニサキスが消化管を突き破り、腹腔内に出て寄生してしまったものです。寄生した部位によって起こる症状が異なります。

 

(4) アニサキスアレルギー

アニサキスに対するアレルギー反応です。
感染した後、蕁麻疹、血圧低下、呼吸不全、意識消失などの症状を伴う場合もあります。
アレルギーの中でも最も重篤な病態がアナフィラキシーショックです。国内のアナフィラキシーショックの原因別の頻度では、アニサキスは、食物、薬物に次いで第3位となっており、決して珍しいというものでもありません。「青魚アレルギー」だと思われていた方が、実は「アニサキスアレルギー」だった、というケースも少なくないようです。

 

アニサキス症の検査方法

(1) 内視鏡検査

胃アニサキス症が疑われる場合、緊急で胃内視鏡検査(胃カメラ)を行い胃粘膜に刺入したアニサキスの虫体を探し、確認できた場合はその場で鉗子を用いて除去します。
腸アニサキス症の頻度はかなりまれですが、症状的に必要であれば腹部超音波検査大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を行います。

当院では緊急の場合でも苦痛を最小限にした胃内視鏡検査を行っていますので、安心して受診してください。ただし、胃内視鏡検査に関しては最低でも食後6~8時間程度経過していないと胃内に食物残渣が残っていてアニサキスを発見し除去することができません。食事を摂らずにお電話ください。

 

 

(2) 血清抗体検査

血液を採取して抗アニサキス抗体を調べます。
腸アニサキス症や消化管外アニサキス症が疑われる場合に行います。

 

(3) 腹部超音波検査(エコー検査)

問診の結果、小腸に寄生している可能性があると判断した場合、小腸壁の肥厚などがないかどうかを確認するために腹部超音波検査を行います。

アニサキス症の治療

(1) 胃アニサキス症

胃カメラでアニサキスを確認できたら、内視鏡の先から鉗子を出してその場で除去することができます。除去できると痛みが嘘のように速やかになくなります。
当院では緊急内視鏡検査の場合でも苦痛のない胃内視鏡検査を行っています。どうぞ安心してご相談ください(電話でアニサキスかもしれないことをお伝えいただければよりスムーズです)。

 

(2) アニサキスアレルギー

軽症の場合は抗ヒスタミン薬などの抗アレルギー薬を投与します。症状が強い場合にはステロイドを使用する場合もあります。

 

(3) 腸アニサキス症

発生頻度は1%未満とされており、かなりまれな疾患です。抗アレルギー剤や症状に合わせた内服薬などで辛さを緩和させます。

 

(4) 消化管外アニサキス症

きわめてまれな疾患です。激しい腹痛がありますので、早急に検査を受けて寄生している部位に合わせた適切な治療につなげる必要があります。クリニックレベルでは診断に至らないこともありますので、適切な医療機関を紹介することになると思います。

 

胃粘膜に刺入しているアニサキス

胃粘膜に刺入しているアニサキス

 

アニサキスを鉗子で除去

アニサキスを鉗子で除去

 

除去した後の刺入部位

除去した後の刺入部位

アニサキス症の予防

アニサキスは、70℃以上で加熱、あるいは60℃以上で1分間以上加熱することで死滅します。加熱する場合は、必ず食材の中心までしっかり熱を加えてください。また、冷凍の場合は、-20℃以下で24時間以上保存すると死滅しますので、冷凍したものを解凍したお刺身などは安全です。
アニサキスアレルギーがある方は死滅したアニサキスでもアレルギー症状が出るとされていますので、アニサキスが寄生する可能性のある魚介類自体を口にしない方が安全です。

 

寄生しやすい魚介類

アニサキス症はすべての海産物で起こる可能性がありますが、特に原因として多いのは「サバ」「イカ」「サンマ」「サケ」「カツオ」などです。ご注意ください。